離散数学「数え上げ理論」 (ブルーバックス)

離散数学「数え上げ理論」 (ブルーバックス)
野崎 昭弘
講談社
売り上げランキング: 25606

とても面白い。

一般向け自然科学書籍なるカテゴリに属するものには、「数式は使ってない=わかりやすい」という誤った認識を読者に与え、それによって読者を増やそうとしているものがある。この本はそうではなく、すべての場合を列挙するという素人にも理解可能なアプローチを一旦押さえた上で、数式を必要十分に使うことで、数式あるいや理論の威力を読者に伝えることに成功していると思う。しかも、理論のほうが高尚だとか、そういう押し付けはなく、エレガントな方法よりも、「エレファントな方法」のほうが、柔軟に応用が利くようなケースも示している。

そういう点で、自然科学の一般的読み物として、簡単なようで難しいハードルをクリアした、成功例だと思う。

場合を列挙する方法として、闇雲にもれなく数え上げる方法を考えるだけでなく、
1)小さい問題を考えて、あとで一般的に拡張する、
2)数え上げやすいものと1対1に対応づける、あるいはよく似たことだが、
3)「逆対応の術」を使う、
など、忘れないようにしないと。

また、フィボナッチ数、分かち書きと構文解釈の難しさの比較、賭博の必勝法など、興味深い問題を、興味がわくように解説している。フィボナッチ数の漸化式と「閉じた公式」の話では、整数を扱う問題でありながら、無理数が閉じた公式に表れるなど、意外な感じ。

差分方程式、母関数のあたりは、面白い例が1つずつあるだけなので、いまひとつ応用できるまでには理解ができなかったので、もう少し専門的な本を選んで学んでみたいと思った。

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宇宙エレベータ

宇宙エレベーター
宇宙エレベーター
posted with amazlet at 09.03.23
アニリール・セルカン
大和書房
売り上げランキング: 12536

宇宙エレベーターのことは、ほとんど書いてない…。著者の活動紹介のような感じ。多次元宇宙のこととか、いろいろ書いてあるのだけど、興味沸かず。ほぼ読み飛ばし。

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宇宙旅行はエレベーターで

宇宙旅行はエレベーターで
ブラッドリー C エドワーズ フィリップ レーガン
ランダムハウス講談社
売り上げランキング: 12786

若田さんが乗ったスペースシャトルの打ち上げが成功したが、この本はロケットに変わり宇宙開発の鍵を握るという宇宙エレベーター(あるいは軌道エレベーター)に関する。読んでみると、著者の本書による目的は、宇宙エレベーターが、既存技術の組み合わせによって、ほとんど実現可能な段階であることを世の中に知らしめることにあるようだ。

しかし、その目的の半分は失敗しているといわざるを得ない。まず、本文の中に、いくつか相互に矛盾する記述が少なからずあり、そのせいで、本書全般に対する不信感をぬぐえない点である。たとえば、宇宙エレベーターを標的にするテロの可能性について、前半では「意味がないので心配ない」としながら、後半では「9.11テロ以降、検討の必要があると考えた」などと、反対の趣旨の記述がある。こういうブレが多いと、著作全体に対して疑念を持ってしまう。ちなみに、テロの可能性は大いにあると思う。

次に、宇宙エレベーターの実現の中でもっとも不可欠な技術である、カーボ・ナノチューブによるケーブルであるが、これが最も大事であるにもかかわらず、現状、必要な強度の素材が開発途上であり、実現の見込みも明らかにしていない。これでは、そのほかの要素技術が可能だとしても、やはり宇宙エレベーターは、現在の技術では不可能ということになる。その点の説得力にかけている。技術的な課題を明確にして、今どこまでできているのか語る必要が、本書にはあったのだと思う。それが足りない。

さらに、宇宙エレベーターの開発主導権を誰が握るか、という可能性の考察であるが、NASAは組織的な疲弊等で動きが鈍く見込みが薄く、民間企業、一握りの個人、米国以外の国家が主導権を握る可能性を示唆している。技術のコモディティ化が宇宙開発にまで及ぶという考察は興味深いし、その可能性も高いのだと思うが、結局この議論も、宇宙エレベーターの主導権争いが、何を中心に回るのかという洞察を欠いており、可能性を述べたに過ぎないような印象がある。穿ってみれば、NASAにはいまいち相手にされないので、ほかのパートナーを物色しているように見えなくもない。

というわけで、広報活動に色気を出すより、まじめに技術開発してほしい、と思う次第である。低コストで宇宙空間に出かけることには、非常に大きな発展の可能性があるのだから、ちゃんと技術的に実現可能性を示して、NASAを味方につけるのが正しいのではないのか?

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Google Earthでみる地球の歴史

Google Earthでみる地球の歴史 (岩波科学ライブラリー)
後藤 和久
岩波書店
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地球誕生から今までに起こった出来事のうち、地質学的、考古学的などの観点で重要なものをGoogle Earthで訪れる。Google Earthを使って遊ぶ時間のない人にお勧め。

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高校数学でわかるボルツマンの原理 (ブルーバックス)

高校数学でわかるボルツマンの原理 (ブルーバックス)
竹内 淳
講談社
売り上げランキング: 3604

新聞の下側にある書籍広告で見つけ、書店で購入。「わからずに死ねないもの」というのをいくつか持っているのだけど、熱力学と統計物理学もそのひとつ。熱力学第一法則、第二法則というとわかったようでわからない、統計物理学はなんだか面白そうなんだけど、現実とどう対応しているのかわからない、という私には入門編としてうってつけだったように思う。これで、死んでもよくなったとはいえないが、死んでもよくなるための入り口には立てたかな。

アプリオリに高校物理の教科書に現れる気体の状態方程式、熱力学第一・第二法則、熱力学と統計物理の関係など、高校数学だけでは若干無理なところもあるような気がするが、理系大学2、3回生なら、まず理解できると思う。数式をきちんと使っているところがよい。物理の一般教養書で、数式を使っていないことを売りにしているものがあるが、あれは間違っている。数式はちゃんと使うべき。その点、この本はよい。

統計物理学に関しては、マクスウェル・ボルツマン分布とボルツマンの原理の2つぐらいしか説明していないので、この本を取っ掛かりに、教科書を読む必要があるだろう。熱力学のほうにウェイトがあるのは否めないが、熱力学を必要最低限と、統計物理学とのかかわりを、途中の説明を省略することなく、数式レベルで解説しているところに最大の価値があると思う。

熱力学や統計物理で落ちこぼれた人、これから学ぼうとする高校生、大学1,2回生には特にお勧め。

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ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く

ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く
リサ・ランドール
日本放送出版協会
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時間切れで半分までしか読めず。図書館で借りたため。人気図書らしく貸し出しの継続ができなかった。

一般相対性理論、量子力学、電弱理論、標準モデルあたりまでは他の同カテゴリの図書とも共通な内容だけど、無理に説明を省略したりしない分、ページ数は多いが、わかりやすい。

まだこの本のメインである多次元宇宙についての解説まで読めていないので、何も書けない…時間が取れないので、この本は結局読了できないかも。

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非線形科学

非線形科学 (集英社新書 408G)
蔵本 由紀
集英社 (2007/09)
売り上げランキング: 21617

非線形科学と聞いて思い浮かべたのは、ああ、線形ではないのね、ニューラルネットなど、非線形モデルで定義したシステムに関する研究についての本なのかな?ということだった。

しかし、この本は、たとえばニューラルネットなど特定のモデルに限った話でないのはもちろんのこと、非線形モデル全般の話でもない。そんな狭い話題ではないのである。タイトルを見直すと、非線形「科学」である。非線形「モデル」ではないのである。このあたりから、勘違いしてしまった。第一章から読み始めると、すぐにそのことに感づかされる。そこですかさず襟を正す。

いきなり第一章から、非線形科学が取り扱う自然観、非線形科学を通じて見渡せる地平に対する、著者の強烈な思いが語られる。非線形科学に対するイメージを著者と十分共有できていないこの段階で、研究テーマに対する思いを読者に伝えるのは、相当に難しい作業だとおもうのだが、何とかそれができてしまっている。これはとても難しいことなので、確かに難解だし、ある程度自然科学になじんだものではないとついてこれないかもしれない。この本は、数式を使わない、一般向けの本ではあるのだが、読者はそれなりに選ばれるのである。

第三章から五章では、非線形科学での事物の振る舞いの本質である3つのアトラクターについて詳述しており、ここで、この本の中での非線形科学の輪郭がはっきりする。ここを理解できたなら、非線形科学のイメージを、その一端たりとも著者と共有できたといえるだろう。

第六章は、フラクタル、ネットワーク理論に言及している。後者では冪分布と非線形科学の関係が面白かった。冪分布は、それが現れる理由は多くの場合明らかではない。そのくせあちこちに現れる。

そして、エピローグであるが、再び著者の、非線形科学への思いが語られる。線形科学においては、複雑な物事は、単純な物事の重ねあわせであるとの立場から、その宿命として、より微細に、より詳細に対象を分解することで進展を成し遂げてきた。それは世の中を変革し、人々の生活を豊かにした反面、この科学を作り出した人間には制御不能な事象も同時に生み出してしまった、というような意味のことを語り、これまでの線形科学の発展をたたえる一方で、真摯に反省もしている。自然科学に携わる者として、失ってはならない資質がここにあると思う。

そして、複雑なものをそのままに、そして一見無関係な現象のなかの事物の振舞い方に共通性を見出すという立場に立脚する非線形科学が、確かに学問として成り立つ、すなわち普遍性を持つことは、これまで見てきたとおり、疑いようのないことであり、まだまだこの分野は発展途上の、今世紀の科学であると述べている。

著者がまだ若手研究者で、線形科学的なアプローチに漠然と疑問を抱いていた頃、影響を受け、触発された研究者、論文との出会いなども少しエピソードとして載っている。研究に付随する苦悶の様子が見えるようでもあった。そういう点でも、高校生、大学生には、この本はぜひ読んで欲しい。

どうも、著者の蔵本先生の講義は、学生時代に聴いたような気がする(覚え違いかもしれないが)。あと、褒めちぎってばかりいたので、ひとつこの本で満足いかなかったところをいえば、第六章。フラクタルは非線形科学の領域なのだろうが、この部分にも、フラクタルの非線形モデルを数式で示して欲しかった。第三から第五章で説明されたアトラクターと、フラクタルの関係が、この式を示すことによって、直感だけでなく、イメージとして理解しやすくなったはずだと思う。

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はじめての“超ひも理論”―宇宙・力・時間の謎を解く

素粒子研究の延長線上になぜか出現する「ひも」。このカテゴリの本を読むのは初めてで、「ひも」とは何かのたとえなのかと思っていた。しかも頭に「超」がつく。意味がわからなかった。しかし、この本でいくつか疑問が解決した。

・素粒子研究が粒子を最小単位として展開する研究であるのに対し、超ひも理論は粒子ではなく、本当に「ひも」状の実在を最小単位として展開する研究であること
・素粒子研究(超ひも理論も含む)を論じると、どうして宇宙の始まりと終焉がわだいになるのか。それは、時間、空間を細かく、細かく調べていくと、宇宙の始まりの時期において、世界が(すなわち物質や時間が)どのようであったかを論じることにつながっていく

もうすこし専門書に近いものも読んでみたい。数式の出てくるやつ。

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「複雑ネットワーク」とは何か―複雑な関係を読み解く新しいアプローチ

世界は狭い=スモールワールド的な話題が、インターネットの普及や近年のweb2.0的なサービスの一般化によって、また新たに注目を呼んで、ネットワーク研究の最近の成果が身近なものになってきた。反対に、このような社会の変化が引き起こした関心が、研究を加速したという面もあるかもしれない。この本は、ケーニヒスベルグの巡回問題からはじまり、ツリー、格子、ランダムグラフなどの古典的なグラフの特徴を解説した後に、注目のスモールネットワークやスケールフリーネットワークを、ノードの次数、平均距離、クラスタ性、べき則などの概念により、インフォーマルに、わかりやすく定義していく。すごろくや宴会ゲームの例なども、読み物として、というか与太話のネタとしても面白かったし、伝染病やコンピュータウィルスの感染のモデル化の研究紹介や、mixiの流行理由の著者なりの見解などもよい。
ただ、8章のニューラルネットや脳の話は余計な感じ。7章までの内容とあまり関係がない。

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暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで
サイモン シン Simon Singh 青木 薫
新潮社 (2001/07/31)
売り上げランキング: 3979

「フェルマーの最新定理」に続き、サイモン・シンの著作を読む。内容への関心度がこちらのほうが高かった分、個人的には前作よりもこちらが面白かった。多くの書評が述べているように、シンの著作には、素人にもわかりやすく、技術と人物の両方にバランスよく焦点を当てつつ、読者を楽しませながらも技術が判った気になるというすばらしい技量に感服させられる。

そういうわけで、いまさら論評する気にならないくらいなので、自分への備忘録。長い暗号作成/解読のせめぎあいの歴史をよくまとめてあるが、

カエサル・シフト暗号 →アラビア数学者、頻度分析
ヴィジュネル暗号 →バベッジ、頻度の周期性
エドガー・アラン・ポー、「黄金中」
ビール暗号
ワンタイム・パッド暗号 →解読不能→鍵配送問題
エニグマ >レイェフスキ、メッセージ鍵の2回繰り返しに注目し、換字のループがプラグボードに依存せず、スクランブラーのみに依存することを手がかりに解読。
   >アラン・チューリング、メッセージ鍵の2回繰り返しの前提無に解読。クリブ(カンニングペーパー)を利用。1ステップずつスクランブラー初期設定が異なるエニグマ機を連結し、「ループ」を抽出。これがプラグボートには依存しないことを発見。これによりチェックする組み合わせの数を大幅に削減。
線文字Bの解読 >コーバー鍵配送問題 >デフィー、ヘルマン、マークル(スタンフォード)
RSA暗号 >リヴェスト、シャミア、アルドマン(MIT)
   >エリス、コックス、ウィリアムソン(GCHQ)
PGP   >フィル・ジマーマン
量子暗号

といった内容。読んでない人にはなんだかわからないだろう。そういう人はぜひ読んでいただきたい。RSAはPGPなどの暗号ツール化されて、素人にも使いやすくなる代わりに、技術のポイントがどこにあるかわかりづらくなっているが、シンは非常にシンプルに要点を解説してくれているので、どういうわけで素数が暗号作成に役立つのか、ほかの技術文書をいくつか読むよりもずっとわかりやすい。

最後には量子コンピュータによる暗号解読の可能性と、量子暗号に関する解説がなされている。これも直感的に監督しづらい概念だけれども、見事に説明しきっている。

ただ、素数を扱うRSA暗号については、その数学は説明がされているけれども、本当にこれでイヴに解読されないかどうかの直感的説明はされていない。フェルマーの最終定理と同様、素数の特性は人間の知性では直感的な理解を超えるものなのだろう。シンをもってしても、直感的解説は困難なようだ。

なお、本書は最近文庫化された。今なら書店で平積みになっているだろう。

暗号解読 上巻 (1) (新潮文庫 シ 37-2)

暗号解読 下巻 (3) (新潮文庫 シ 37-3)


しかし、これだけの良書、蔵書しようと思うのであれば、ぜひ単行本で。

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生物と無生物のあいだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)
福岡 伸一
講談社 (2007/05/18)
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ワトソンとクリックによるDNAの二重らせん構造の発見以後、生命とは、「自己複製能力を持ったシステム」というミクロレベルでの定義がなされ、生物とは何か、という深い問題にひとつの答えが示された。だが、ウィルスはほかの細胞の力を借りながらも、自己を複製する一方で、一定の条件化では食塩や明礬のように結晶をつくるという無生物のような性質も備える。この本ではウィルスを生物とは定義しない。これに代わる「律動する生命」を、「生物と無生物の界面」を、同じくミクロレベルで正確に定義する、というのがこの本の主題である。

自己複製という機能、物理的存在としての捕らえ方では生物の記述は不十分であり、生物を形作るまでの不可逆なプロセス、そのダイナミクスが備える相補性に担保された振る舞いこそが生物自体という定義が、生物学の研究者としての立場から、自身の研究成果や、エピソードも交えながら、素人にもわかりやすく、十分な説得力を持って主張されている。

また、この本の魅力は、この主題だけではない。DNA発見のダークな裏話や、研究者同士の競争、日米の大学の組織の違いはもちろん、ジグゾーパズルの「やまのん」のサポートサービスの話まで飛び出す。それらをきっかけに、徐々に著者の結論に近づけられていくようで、読み物としての楽しさも備えており、それがこの本の評判でもあるようだ。

最近の新書は、時事ネタものが目に付くので(これが新書の役割のひとつでもあるが、行き過ぎ)、生物学で新しい進展が最近あったかな、と思ったのだが、この本はそういう時事ネタ新書ではない。著者の研究は確かにDNAの発見のように、わかりやすく華々しいものではない。今後も著者の研究と同様の事実の積み重ねがなされ、最終的にはそのダイナミクスを説明する物理的存在が明らかになるときがくるかもしれない、という状態のものだろう。物理的な発見と、プロセスの解釈では、わかりやすさが違ってしまうのは仕方ない。だから一般向け書籍としては読み物の体裁をとったのだろう。とはいえ、時事とは関わりなく、これだけ硬質な内容を語りきったクォリティの高さはすばらしい。

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宇宙の定数

宇宙の定数
宇宙の定数
posted with amazlet on 07.02.25
ジョン・D. バロウ John D. Barrow
青土社 (2005/02)
売り上げランキング: 295934

物理学を習うと、万有引力定数、光の速度、プランク定数などの、定まった値が現れる。これらは本当に定数なのか、それとも条件等によって実は一定ではなく、ほかの値によって定まるものなのか、さらに一定だったとして、ほかの値になりえた可能性はあったのかどうなのかなど、物理法則を規定するこれらの値に関する議論を広く網羅し、解説した本。

内容は少し難解。図解などを適宜含むが、イメージ図のようなもので、これを見てもきちんと理解できたような気がしない。著者は科学技術ライターというよりは、研究者らしく(文中で自身の理論に言及しているのでそうだと思われる)、一般向けの解説書ともいえないし、もちろん論文でもないし、中途半端でよろしくない。判った気になるためにも、場合によっては大学学部生レベルの知識を要求するものもあると思う。本書の結論としては、基礎定数と思われている値たちは、どうやら定数ではなさそうだ、ということのようだが、まだ決着はついていないということらしい。

宇宙を扱う物理学、量子力学など、ここに独立したように見える理論たちが、基礎定数を通じてどうつながっているか、基礎定数が真に定数なのかどうかは、どのように判別できるものなのか、そこから引き出される結論はどんなことになるのか、といったことが雰囲気だけでもわかると、なかなかに楽しいものではあったので、そこは悪くなかった。宇宙物理学って、Newton誌なんかでは取り上げられるものの、そこから引き出される概念は日常と合致しない。宇宙を記述する数式って、目に触れる機会がない。量子力学は教科書を読むと数式だらけなのと対照的。宇宙物理学の専門書ってあるだろうか(まああるだろうけど)?理解できるものなんだろうか?

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マクスウェルの魔

マクスウェルの魔―古典物理の世界
戸田 盛和
岩波書店
売り上げランキング: 257879

万有引力、力学の解説はわかりやすい。続く熱力学がやっぱりわからない。熱力学第二法則の説明が、法則ありきな説明になってないだろうか?つまり、熱力学第二法則がみつかった、あるいは正しさが証明された過程よりも先に、この法則があるので、こう考えるとつじつま合うでしょ?というような流れになっていて、いまひとつ正しさを納得したといえない。ちょっと斜め読みの角度がきつかった?

もっと気になるのは「負のエントロピー」について。熱力学第二法則からは、ほかに影響を与えることなくエントロピーが小さくなる方向には進まない、ということになる。そこまではいいとして、じゃあ何で、エントロピーが小さい生物という存在が生まれてくるのか、という問いに対して、エントロピーが極めて小さい太陽が影響していると述べている。わからない。太陽のエントロピーがとても小さいことはわからなくはない。でも、負の値ではないのでは?エントロピーの定義によれば、値は常に正である。

このように、後半はすこしたとえに飛躍が大きすぎる。素人向けにわかりやすく、は結構だが、誤解を招いたり、説明している範囲内で奇妙な点が残るところがよくない。あまりお勧めでない。

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統計・確率の意味がわかる―数学の風景が見える

統計・確率の意味がわかる―数学の風景が見える
野崎 昭弘 伊藤 潤一 何森 仁 小沢 健一
ベレ出版
売り上げランキング: 142,227

理系の高校生から学部生レベルの確率・統計の教科書。例題ベースで具体的な値を用いた問題の解き方をトピックごとに解説する形式。確率統計の数学は、高校生がそれまでに習う数学と雰囲気が違うせいか、厳密な議論をするために変数を含んだ式を持ち出すとわかりづらいこともあるかも。特に考え方を身につけ、意味がわかるようになるまでは。まずそういう人たちにはお勧め。

また、試験問題を解く立場の受験生にも、例題ベースで、解法だけでなく理屈もまとめて1冊にしてある本なので、使い勝手がいいと思う。受験生だった頃は、理解をまとめるためにノートを作ったりしたものだが、この本の内容はまさにそのとき作ろうとしていたノートのようなもの。網羅している範囲や解説の深さも過不足ないだろう。

最後に、かつて理系の学生だった大人にもお勧め。専門外のことは長らく離れていると忘れてしまうもの。なのに急に昔の知識が必要になることもある。そんなとき、厳密な数学書をひっぱりだすよりも、考え方を思い出すきっかけになる本が役に立つ。昔きちんと理解していたことなら、きっかけが得られることで、深い理解も思い出すことができるだろう。

この本を見つけたのは、ちょうどそんなときに、近くに図書館がなくて書店で何でもいいからわかりやすそうな確率・統計の本を見つけようとしていたときだった。大きめだけど所詮町の本屋では望み薄だと思っていたのだが、思いがけずいい本に出会えた。

#でも実は買ってはいません。ごめんなさい。

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フェルマーの最終定理

フェルマーの最終定理
サイモン シン Simon Singh 青木 薫
新潮社 (2006/05)

問題の意味なら小学生でもわかるけど、証明するとなるとそうはいかないフェルマーの最終定理。


  • フェルマーの最終定理より前の数学の歴史、
  • フェルマーの最終定理を作った意地悪なフェルマー、
  • この定理を証明するために賭けた数学者の人生、女性数学者たち、
  • 証明のために深まった数学の研究

など、フェルマーの定理を中心に広がるさまざまなトピック、エピソードが語られている。しかも、プロジェクト某のような、研究にかける地と汗と涙の物語みたいにはなってなくて、、数学の専門家でない読者が読み物として楽しめる。

ただし、モジュラー形式の直感的な解説が、その他の概念の解説に比べるとぜんぜんわからないので、一番の山場である谷山-志村予想に関しては「そういうものがあるんだなあ」くらいにしかわからない。そこのところだけはもうちょっと説明があってもよかった。説明のしようもないほど難しいのかもしれないが。ここに関してはもう1冊くらい読んでもいいかも。

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現代工学のための数ベクトルの空間からヒルベルト空間へ

現代工学のための数ベクトルの空間からヒルベルト空間へ
篠崎 寿夫 吉田 正広 高橋 宣明 富山 薫順 松浦 武信
現代工学社 (1994/07)
売り上げランキング: 321,172

修士課程のとき、勉強してもしても、なんだかわからなかった関数解析学。バナッハ空間とかヒルベルト空間とか、なんでそんなもの考えなきゃいけなかったのかがわからないから、ノルムがどうとか内積がどうとか言われても右から左。

わけあって、10ウン年ぶりにチャレンジ。amazon.comなどの本の評判を知る手段ができたおかげで、いい本を見つけられたと思う。新しい概念を学ぶためには、繰り返し、といってもただ繰り返すだけではなく、少しずつ既知の概念を一般化しながらスパイラルに理解を進めていくのがいい。この本はそんな感じで、2次元や3次元のベクトル空間を3段階くらいで一般化しながら、続編の「現代工学のためのヒルベルト空間上の線形作用素入門」で扱うヒルベルト空間とはなにか、なぜそんなものを扱うと役に立つのかという点に絞って明らかにしていく。

欲張らずに、ヒルベルト空間論のおいしいところである作用素については潔く譲り、バナッハ空間はばっさり切るのも、初学者が混乱しなくていいと思う。もちろん数学的な厳密性にかける点はあるだろうが、それよりも、理論を作り上げる動機を伝えることにある程度成功している点にこの本の価値があるだろう。

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